読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

びぼうろくてきな

アイドルと声優がすきです

夜はともだち、を読みました

BL


Amazon.co.jp: 夜はともだち (POE BACKS Babyコミックス): 井戸ぎほう: 本

 

先日のこのBLがすごい2014スカイプでわたしが1位にあげたのがこの作品なんですけど。

12月発売だから厳密にはこのBL〜2014の対象外になるんだけどそれでも入れたくらいよかった。

 

 

ネタバレしかないので以下閉じます。

 

 

 


一言で言うとSMモノなんですけど、Mの受け(飛田くん)は真性ドMなのに対して攻め(真澄)は特別サディストってわけじゃないしそもそもこの2人は恋人ですらなくて。

だったらセフレじゃん?って感じだけどなんかそれもしっくりこない。プレイメイト?うーん。

 

真澄は飛田くんのことを縛ったそばから「痛くない?」って聞いちゃうし、頭を踏んだら怖いな〜ってびびっちゃうし、言葉攻めしつつ足コキしながら「足つったらどうしよう」って思ってて、慣れない行為に恐る恐るなのが健気でかわいい。

そうだよねノーマルの子がそんなノリノリで縛ったり加虐したりってなかなかできないよね…この作品はその辺りの心情の機微が細かく描いてあって好きです。

 

SMとかよくわかんないけど痛そうだって思う気持ちはわかるし、縛ったり殴ったりっていうハードなプレイが多い作品って読んでてもそれ痛そう〜って思うこと、結構ある。

というか、普通の男の子だけど、ドMの子に付き合ってS役できちゃう真澄のポテンシャルってすごい気がする。
自分の性癖と違う行為に対してつきあってあげてる、というよりもドMの飛田くんに尽くしてあげてる感じでSはサービスのSとはよく言ったものだ…真理…
行為としては真澄が攻めだけど、真澄を選んだのは飛田くんだし行為の内容も飛田くんの嗜好に沿ったものっていう飛田くんの精神的優位性がいいなって思います。

そんな中で前の男の存在に追い立てられてはじめて加虐的な行為への快感を覚える真澄の支配欲の目覚め is 素晴らしい…!

その気持ちの変化に真澄自身が追いついてなくて戸惑うのがリアル。

妄想では好きなキャラのこと殴ってみたいって思ったことあっても実際にそれができるかって言ったらたぶん間違いなくできないし、そもそも倫理的にどうよ、みたいに思うわけですよ。


わたしは真澄がハサミ持ったまま飛田くんにキスするシーンが最強に好きなのでみなさんどうぞよろしくおねがいします。


土下座させられて、ひどいこと言われて、そんなの楽しいのかよって思ってる真澄に飛田くんが
「俺がこういうことをする理由を聞きたいのか?なんて言えば満足なんだ。親父が頭おかしかったとかガキの頃虐待されてたとか(中略)理解できる理由があれば安心して殴れんの?」
って言うんですけど、ここが!ほんとうに!好きで!!!
真澄が飛田くんを殴ることは愛情表現として「したいこと」ではないから。

だからこそ真澄はどうしたいの、って言われて飛田くんが焦れるくらい優しく抱く。

今まで自分が好きなように抱かれてきた飛田くんがはじめて相手がどうしたいのか聞く、っていうことに、二人の関係への諦観を含んでいたとしてもおぉ…!って思った。

手酷く扱われて性欲を満たすことしか求められてないって思ってる真澄と、あっちはこーいうこと慣れてないし優しいし楽しくないんだって思ってる飛田くんのすれ違いっぷりが苦しい。
真澄が楽しいこと好きなこととしたいこと、飛田くんの好きなこと楽しいことされたいことは全然違う。相手を思い合う気持ちが無いわけじゃないけどそれしかない。
あんまり関係ないけど、楽しいが共有できないもどかしさとかいらいらとかが募っていくのを見てると「音楽性の違い…」って思った。
真澄には真澄なりの悩みがあって、飛田くんにとって自分は性的にSとして振る舞ってくれるってだけの人間じゃないか、セックスしてデートしてご飯食べて、真澄の思う普通を過ごして、でもそこに飛田くんの好意はあるのか、ってところで悩んでる。だって飛田くんは全然楽しそうじゃないから。
たまにネットの恋愛相談とかで見かける「彼氏の性欲が強くて自分は彼女じゃなくて性欲処理なんじゃないか」って類の悩みのことを少し思い出した。


飛田くんは「嫌いな奴とメシ食ったりしない」って言うけど真澄の「普通」では嫌いな奴ともメシくらい食うことあるんじゃない?って思う。普通って難しい。
誕生日プレゼントに大事な本をあげたことも一緒にご飯を食べたことも興味のない水族館につきあったことも飛田くんにとっては愛情表現、というか気持ちがあるからこその行為だったけど、真澄はその先の飛田くんが楽しいと思う感情を求めてて、ああ噛み合わない…


真澄のしたい「普通」のセックスでは飛田くんがイケなくて真澄は「やっぱりね」って笑うし、飛田くんは最後まで真澄に「好きだ」って言葉にしない。

二人ともが心も体も満たされるってどうしたらいいんだろう。この二人においては、どっちかが、あるいは両方が、妥協して折れて我慢してその上にしか成り立たない幸せってほんとに幸せなのか。

そもそもそれが出来なかったから破綻するんだ。切ない…。

作中で真澄が「セックスよりもっとって何があるんだ」って考えるけど確かに難しい。
二人の関係を精算しよう、終わりにしようって間際になって飛田くんは「また気が向いたら俺に会いに来て」「多分俺はこれからずっとそれだけ待ってる」って言う。これはずるい。
飛田くんは別れのときまでずっと「されたい」っていう受身の存在で、痛めつけてほしい、手酷くしてほしい、会いに来てほしい。それが悪いこととかじゃなくてきっと真澄にも「されたい」ことがあったんだと思う。

一緒にご飯を食べてるときとか、デートしてるときにも楽しそうにされてみたい、セックス中以外にもあの全部に飽きたみたいな目以外の目で見られたい、とか。

ここまで叶えられることはなかったけれど。


最後の最後まで飛田くんが真澄に好きだって言うことはないけど、飛田くんは星が好きで、飛田くんの目は金星に似ていて、別れの日の朝の明けの明星を「あんなに綺麗な金星は見たことがなかった」って言うの、すごく遠回りな表現だな〜って思ったけど過不足なくぴったりな言葉。

 

 


あと描きおろしの後日談的なのがすごく良かったです。与え与えられる関係。楽しいからしてほしい。喜ぶからしてあげたい。わかりあえないからこそのギブアンドテイク。